何を言うか → いかに言うか
- 総合コース (現・基礎コース)
- アドフロンテ
- 野村京平さん
- アドフロンテ
- 総合コース (現・基礎コース)
受講したきっかけは。
本屋さんでたまたま見かけた『宣伝会議』で宣伝会議賞のことを知り、応募してみました。そのときは残念ながら受賞に至りませんでしたが、生まれて初めてコピーというものの面白さと奥深さに触れ、「広告をつくることを自分の仕事にしたい」と強く思いました。当時、郷里である三重県の地方銀行に勤めていたのですが、しばらく悩んだ後、思い切って退職し、無職のまま上京しました。
実際に受講してみて、感じたことは。
まず総合コースを受講したのですが、土曜日のクラスだったせいか、けっこう社会人が多かった気がします。すでにプロとして仕事をしている人も多く、彼らが課題で書くコピーは自分なんかのよりずっとアイデアに富んでいたり、洗練されている気がして、すごく刺激になりました。
印象に残っている講義は。
初めてコピーを褒めてくださったのは一倉宏さん。うれしかったので、忘れられません。一倉さんにはその後、専門コースでもお世話になりましたが、ビジネスツールとしての枠を遥かに超えた、コピー(コトバ)の面白さを教えていただきました。また、柴田常文さんの「豆腐」や、斉藤春樹さんの「下駄」など、それぞれの課題とその講評から学んだことは、仕事に向かうときのキホンとして、今でも毎日、自分を支えてくれています。
講座ではどのようなことを学びましたか。
たくさんのことを学ばせてもらいましたが、一番のキモは、「(1)What to say(何を言うか)→(2)How to say(いかに言うか)」という思考回路を身につけられたことだと思います。簡単なことに見えて、実践できている人は案外少ないのではないでしょうか。これを身につけることはコピーを書くことばかりではなく、人生の様々な局面で役に立つと思います。
転職活動について聞かせてください。
養成講座で取り組んだ課題を中心に作品集をまとめ、求人広告を出していた広告会社や制作会社の面接を受けに行きました。他業界から来た未経験の自分をすぐにコピーライターとして採用してもらうのは難しそうだったので、「しばらく営業職を経験してからなら……」と内定をくれた会社に入社しました。もし希望する職種ですぐに採用してもらえるならそれが一番だと思いますが、最近の厳しい経済環境を考えると、職種や条件にこだわりすぎずに潜り込んでみるというのも一つの手だと思います。立ち止まっているよりは、一歩でも近づいた方がいいでしょうから。また、「スタートで遅れをとっても後から逆転できる可能性がけっこうある」ということも、この業界の良い点だと思います。
前職を経験していたメリットはありましたか。
銀行では入行一年目から中小企業の経営者の方々と話す機会が多かったので、人と話すことに対する苦手意識が克服できました。この経験はミーティングやプレゼンでかなり役に立っています。あと、大きな声では言えませんが、この業界には案外、社会人としてちゃんとしていない人が多い気がします(笑)ビジネスマナー的なこととか。そんな中では、一般の会社で働いていたことは、意外と武器になります。
コピーライターになってみて感じたことは何ですか。
ひとことで言うと「案ずるより産むがやすし」でしょうか。銀行を辞める前は色々と悩みましたし、家族や銀行の上司など、周りからはものすごく反対されました。転職後も、スタートが遅かったことで少々悔しい思いもしましたし、壁にぶつかることもありました(というか、今でも日常茶飯事)。でも、自分や周りに嘘をつきながら働いていた銀行員時代より辛いことには、まだ出会ったことがありません。人間は好きなことなら頑張れる生き物なんだと思います。こんなぼくでも、どうにか食えていますので。
コピーライターに向いている人はどんな人だと思いますか。
偉大な先輩たちが口をそろえて言われていることですが、コピーライターの仕事の本質は、「書くこと」ではなく「考えること」にあります。表現者としてコトバにこだわりを持っていることも資質として当然必要なことですが、論理的思考ができて、なおかつそれにより他人を説得できることも重要だと思います。…… というわけで、感性と理性のバランスのとれた人が向いているんじゃないでしょうか。
受講を検討している方へのアドバイスをお願いします。
自分の経験から言うと、受講料のもとは十分にとれます。結果としてプロにならなかったとしても、得るものは本当にたくさんあるはずです。……ただ、どんな目的で受講するにせよ、「趣味のお稽古事」みたいなノリで通うのではなく、真剣に学んだ方がいいとは思います。ぼくの場合、「仕事を辞めてまでこの道を目指すんだから」みたいな気負いがあり、講義後の懇親会もほとんど参加しませんでした。いま思えばちょっと極端だった気もしますが、それくらいの気持ちで受講しておいて良かったと思っています。講義は間違いなく素晴らしいですが、それを役に立てられるかどうかは自分次第ですね。